セマナサンタ・グアテマラを旅する

 
 
ニカラグアからグアテマラへ向う飛行機は
山肌に段々畑がパッチワークのように広がり、
山あいの所々に湖がきらめく、
山岳地帯の上を飛行して行きました。
 
 
グアテマラの空港は町の寄り合い所のような雰囲気。
チェックイン時、預けた荷物を運ぶのも、
見慣れたベルトコンベアーはなく、
人力で運んでいました。
国際空港の雰囲気としては、不思議な感じです。
 
 
コスタリカからグアテマラに一足早く着いていた友人が
空港の出口で待っていてくれました。
治安が非常に悪く銃器犯罪世界一だと聞いていたので、
迎えに来てもらって、とても心強かったです。
 
とはいえ、首都の町には滞在しない方が良いと言われていたので、
着いたその足でシャトルバスに乗り込み、
アンティグアという1時間ほど離れた標高1520mの街へ向いました。
 
 
 
 
1.コロニアル調の静かな街
アンティグアは町全体に石畳が敷き詰められ、
コロニアル建築の街並みが落ち着いた雰囲気。
私たちが荷物を置いてまず行ったのは
レコレクシオン修道院という
1773年に大地震が起こった際に崩れ落ちた
廃墟の教会施設を訪れました。
地震が起こり、柱や天井などが崩れたそのままではありましたが、
昔の美しかったであろう教会の名残がしっかりと残っていました。
その教会の広かったこと。
 
たくさん部屋やら広々とした中庭やらがあり、
うろうろしているうちに迷子のようになってしまいましたが、
なんとか出口に辿りつき、
次に向った先は織物博物館。
グアテマラでは今もインディヘナの文化が受け継がれており、
そのインディヘナの人たちの衣服は
「ウィピル」と呼ばれています。
 
各村ごとにパターンや色を持っていて、
それぞれが信じられないほど細やかな手織物なのです。
 
どこの民族でも、まず男性の民族衣装が失われ、
残るのは女性の衣装だと言われています。
 
民族衣装を身に着けている人が多いグアテマラと言えども、
ウィピルを着ているのはやはり女性の方が多かったです。
 
そのグアテマラ各地の織物や伝統衣装が展示されている部屋を
さだまさし似のお兄さんが説明し始めた頃から
右足の親指がつってしまい、痛くて
ほとんど説明を聞いていませんでした。
 
石畳をサンダルで歩いたから
足が疲れてしまったのでしょうか。
 
さて、いろいろなパターンを持つ美しいウィピルですが、
展示されているものをよく見ていると、
着物の織り(パターン)にそっくりなものや
琉球王国の色使いに酷似したものがいくつかありました。
「これは絣みたい」
「こんなの、私のおばあさんが着ていたのにそっくりね」
などと言い合いながら織物博物館を出ました。
レコレクシオン修道院と織物博物館と立て続けに周り、
少し疲れ始めたのと、友人もわたしも甘いもの好きなのとで、
友人のおば様お薦めのアイスクリーム屋さんで
ちょっと休憩することにしました。
 
2階のテラスでアイスクリームを食べていると、
セマナ・サンタ(聖週間)のお祭りを見ようと
各国から集まった観光客が通りを歩いているのが見えました。
 
ここアンティグアのセマナ・サンタは
道に生花や木屑に色をつけたものを絨毯のように敷き詰め、
その上をキリストのエルサレム入城を再現する行列が練り歩きます。
 
私たちもそのお祭りを見ようと
このセマナ・サンタの時期にアンティグアへやってきたのでした。
 
 
休んだ後で、カプチナス修道院を見学しました。
 
ここも地震で崩壊したけれど、
その昔、修道女たちが生活していた跡はちゃんと残っていました。
 
また、2階には花の絨毯がひっそり作られ、
向かいの家のアーチにはきれいに花が飾られているのが見えました。
 
 
ところで、このアンティグア滞在中、
友人のおば様のお宅に泊めて頂きました。
 
日本にいた頃から、友人にそのおば様のお話を聞いていたので、
なんだかもうお会いしたことのある方のような気がしていました。
 
その方はグアテマラで織物を学んでいらっしゃるのですが、
今はガイドのお仕事もされていて、
2日目はパナハッチェルというアティトラン湖畔の町を案内して頂きました。
私が普段生活しているマナグアは今オーブンのような暑さなのですが、
アンティグアは標高1520mの高地だけあって、朝晩は寒いくらい。
長袖を着て、毛布をかぶって久しぶりに気持ちよく眠りました。
 
 
 
2.先住民族の暮らす町を訪ねて
パナハッチェルへ向う朝、
午前4時に起きて身支度をしていると、
きれいな小鳥の声が聞こえました。
午前5時。
朝日が昇る前の爽やかなアンティグアの町をバス停に向って歩いていると、
道に花の絨毯(Las alfombras)を丹念に作る人たちの姿がありました。
また、少し行くと共同洗濯場がひっそりと佇んでいました。
ここもどうやら手洗い文化のようです。
女性たちが並んでおしゃべりしながら洗っている様子が眼に浮かび、
私も何か洗ってみたくなりました。
それから中央公園を通り抜け、
町の向こう側にあるバス停に行きました。
思ったよりしっかりしたバスでした。
一番前に席を取ってから、友人が
「一番前が見せしめに殺されやすいんだよね」
と言ったのには本当にびっくりしてしまいました。
銃器犯罪がとても多い国なので、注意しなければならないのに、
一番先頭の、しかも通路側に席を取ってしまった私は
まさに一番危なかったのかもしれません。
今、こうしてブログが書けて良かった・・・
 
さて、バスに乗り込んでから、
友人のおば様が用意してくださった
おむすびと日本茶の朝ごはんを頂きました。
日本食ってなんでこんなにおいしいのでしょうか。
のり、塩昆布、そして白米のハーモニー、
そのおいしさったらありませんでした。
アンティグアからパナハッチェルの街まで2時間半。
急な山道をバスが上り下りしている途中、
幾度もインディヘナの村を通り、
その度に織の違う衣装に身を包んだ人たちが
バスに乗車してきました。
 
女性は子どもも大人も髪を長く伸ばし、一つに束ねたり、
色鮮やかな紐と編み込んだりしていました。
 
シンプルで味気ない服を着ている私たちのような
観光客とは対照的に、
身を飾ることだけでなく生活することに全て対して
丁寧に手をかけている人たち。
 
尊敬すべき人々だと感じました。
 
パナハッチェルの街に着く前に、
ソロラという標高2110mの街を通りました。
この街では男性も女性も美しい伝統衣装をまとっていて、
降りずにはいられませんでした。
 
ちょうど中央公園の周辺で露天市が開催されていて、
ここで途中下車してみることに。
 
男性は茶色に白の格子柄が入った羊毛の腰巻をつけていて、
それが民族衣装ととても合っていて素敵でした。
 
わたしはその日、帽子を忘れてしまったので、
手織物の布を1枚買い求め、
4つ折りにして、頭の上に乗せて歩きました。
ソロラの中央公園の周りをぐるりと一周してから、
再びバスに乗り込み、
アティトラン湖畔のパナハッチェルという町へと向いました。
アティトラン湖は世界で最も美しい湖だと言われています。
水はカリブの水のようにエメラルドグリーンに輝き、
とろりとしているように見え、
その湖の周囲には火山がぐるりと取り囲んでいました。
私たちはパナハッチェルの港から船に乗り込み
「サンティアゴ・アティトラン」という
湖畔で一番大きな先住民の村を訪ねました。
この村の女性のウィピルは
白とエンジの格子模様に動物の柄などの刺繍が織り込まれていて
とてもかわいくて、見ほれてしまいました。
それにかすり模様のスカートをはいています。
男性の衣装は6部丈くらいの半ズボンで、
白とエンジのストライプですっきりとして
とっても素敵でした。
私たちは島についてから、市場の賑わいの中を通り抜けながら
教会へと向いました。
教会は入り口からセマナ・サンタの飾り付けがされていて、
民族衣装に身を飾った人たちが
熱心に祈りを捧げている姿が見られました。
 
また、ここの祭壇は木でできていて、その祭壇の周りを
巨大なトウモロコシの乾燥したみたいなもので
飾り付けられていました。
 
ここの教会の入り口の階段は扇状になっている石の階段で、
そこを子どもたちが大きな葉っぱに乗って滑り降りて
遊んでいました。
どこに行っても、子どもは遊びの天才です。
 
 
その教会の左手には土着の宗教の神様、
「マシモン」が祭られていました。
そっと覗くとなんとも世俗的な神様!
タバコをくわえ、たくさんのいろとりどりのネクタイをしていました。
写真を撮ってもいいかと聞いてみたら、
10ケッツァール(約150円)払ったらいいと言われて撮らなかったので
その神様の写真はありません。
島をぶらぶら散策していると、
子どもたちが興味津々といったまなざしで
じぃーっと見つめてきました。
こちらがにこっと笑いかけると、照れながらも笑ってくれました。
 
アティトラン湖の船の旅から戻り、
パナハッチェルでお土産を幾つか選んで
その日は午後7時くらいにアンティグアの町に戻りました。
 
それからステーキ屋さんへ向って
新鮮なサラダと鳥・豚・牛のステーキとチョリソーの焼いたものを
おいしく頂きました。
 
 
 
3.アンティグアのお祭り
4月6日はアンティグアのセマナ・サンタで
お祭りが一番盛り上がる日。
 
この日も午前4時に起きて、ちゃっちゃと身支度を整え、
メルセー教会で行われるミサを見に行きました。
私たちが着いた頃には、まだ世も開け切らぬうちに集まった
何千人、何万人という人たちで溢れ返り、
大きな柱で見えなかったけれど、荘厳な演奏を聴きながら
その雰囲気に浸ることができました。
そして午前5時。
メルセー教会の正面から紫色の衣装を身にまとった
数百人の人たちが行進し、
続いてキリストのエルサレム入城を再現した行列がでてきました。
 
まだ外は暗く、キリストの悲しげな顔がライトで淡く浮かび上がり、
生演奏と共に雰囲気を盛り上げます。
 
そして夜半から寝ずに作ったであろう美しい花の絨毯の上を
キリスト像が歩み進んでゆきます。
ところどころ、電線が下がっているところは、
電線を上げるための長い棒のような道具を持った2人の男性が
先に歩んで電線を持ち上げていました。
いろいろな花の絨毯を見物したり、
またキリスト像の行列に出会って見物しながら
午前中を過ごしました。
グアテマラに住む同期隊員の友人が会いに来てくれるというので、
この日の正午に待ち合わせ場所に行ってみると、
なんとコスタリカ・エルサルバドルの同期隊員も
アンティグアに集まっていて、
総勢15名の同期隊員の楽しい再会となりました。
 
みんなとこうして会うのは長野県の駒ヶ根の研修以来。
 
イタリア料理屋さんでワイワイ言いながら昼食を食べ、
その後、コーヒーを飲みに公園前のカフェッテリアへ行き、
夕方6時までおみやげ物を買ったりして
一緒に本当に楽しいときを過ごしました。
グアテマラ隊員は布の織のパターンを見て、産地が分かるらしく
市場で物を見る目もしっかりしていてすごいなぁと感心しました。
また、それぞれ身に着けているものが素敵で、
織物のスカートや猫の織物の模様の鞄など
見ているだけで楽しかったです。
 
 
夜は友人のおば様の手作り和食を頂きました。
そのおいしかったこと!
 
白ご飯にニラのお吸い物、豚肉の焼き物に
切り干し大根の煮物にきんぴらごぼう。
それに手作りのイカの塩辛もとても滑らかで美味しくって
やっぱり和食って手作りっておいしいなぁと感動しました。
 
 
 
4.十字架の丘からアンティグアを一望する
最終日はアンティグアの街を散策しようと
午前9時ごろ出かけました。
 
十字架の丘に登る観光警察のツアーに参加し、
長い坂道を友人と話しながら登っていきました。
 
十字架の丘からはアンティグアの町全体が一望でき、
真正面には標高3766mのアグア火山がそびえていて
雄大な眺めを楽しむことができました。
丘から降りて、ブラブラ歩いていると
ラ・フエンテという場所の噴水の周りに、
まるでお花畑のようにウィピルが所狭しと広げられ、
土曜市が開かれていました。
 
ウィピルは目で楽しむもの、
現地の人がグアテマラで着てこそ
似合うんだからと思っていたのですが、
ここのウィピルがあまりにも美しかったので1着購入しました。
ここでもいろいろなウィピルを見せてもらい、
最後まで楽しませてもらいました。
 
 
5.中米を旅して
 
ニカラグアに住んでいる間に
コスタリカ・パナマ・ドミニカ共和国、
そして今回グアテマラを旅しました。
中米の空の下、それぞれの国ごとに
街の感じや食べ物もそれぞれ違っていて、
それでいて日本文化ともつながっているような、
それぞれの旅のひとつひとつが印象に残っています。
コスタリカのアレナル火山の真っ赤な溶岩、
パナマのカスコ・ビエッホの美しい街並み、
ドミニカ共和国の素敵なカリブ音楽とダンス、
グアテマラの静かな街、アンティグア。
日本に住んでいたら
きっと訪れることはなかっただろう土地を歩き、
きっと知り合うことはなかっただろう人々と出会い、
きっと考えることもなかっただろう新しい価値観を知りました。
世界中で毎日を生きている人がいます。
一生懸命生きている人、のんびり暮らしている人、
喜びに満ちて暮らしている人、苦しんでいる人、悲しんでいる人。
おじいちゃん、おばあちゃん、子ども、赤ちゃん。
 
旅から学ぶことはたくさんあります。